The Web Design Group

アクセシビリティに関する神話


神話その1:アクセシブルなページはHTML 2.0で記述されなければならない

間違っています。ページの作者がHTML 2.0、HTML 3.0、HTML 3.2、HTML 4.0、また、メーカ独自の拡張機能を使用しても、アクセシビリティを確保することは可能です。重要なのは、ブラウザによってサポートされていない場合には適切に降格する(degrade gracefully、訳者注:最新の機能の代わりに旧来の機能が用いられること)ような機能を利用し、十分にサポートされていない機能への依存を避けることです。HTMLテーブルを利用する場合など、特別な配慮が必要になる場合がありますが、HTML 4.0の新機能のほとんどは下位互換性に考慮して設計されています。

スタイルシートは、適切に降格する機能のすばらしい例です。スタイルシートを適切に利用すれば、スタイルシートをサポートしていないブラウザを使用した場合のアクセシビリティを阻害することなく、サイトの表現力を著しく向上させることができます。

神話その2:アクセシブルなページは最小公分母の機能(lowest common denominator、訳者注:最新の機能や表示法を使わないようなある種つまらない「枯れた」機能)で記述されなければならない

間違っています。ウェブ上では、最小公分母の機能というものは存在しません。なぜならば、新しい機能はしばしば安全に利用されますし、また、それらをサポートしないブラウザとの組み合わせでも安全に機能します。この神話は神話その1を一般化したものだということができます。

神話その3:アクセシブルなページは、氷河期の遺物のような、味気ないテキストだけものでなければならない

間違っています。ウェブページで色、フォント、マージンを簡単に指定するには、スタイルシートを利用することができます。スタイルシートは、シートが指定するスタイルでページを表示させることもできますし、ページの利用者が独自のスタイルを選択したり強制的に利用しても、コンテンツへのアクセスが保証されます。

ビデオ、音声、画像、Javaアプレットのいずれについても、これらの機能を利用できない人や利用したくない人のために、代替となるコンテンツを用意しておくことができます。このようにすれば、ページの作者は、ページのアクセシビリティを犠牲にすることなく、ウェブのマルチメディア性を誇示することができます。

神話その4:すべてのウェブの利用者はNetscapeを使っているので、他のブラウザのことを考慮する必要はない

間違っています。現時点では、Netscapeはウェブ上で最もよく使われているブラウザですが、ネットスケープを利用していないユーザが非常に多く存在しています(あなたのサイトのアクセス・ログがこの傾向を示していないとすれば、あなたのサイトは他のブラウザではアクセスできないのかもしれません)。たとえ他のブラウザの存在を無視するとしても、Netscapeのユーザが背景画像や背景色、テキストやリンクの色、Java、Javaスクリプト、クッキー(cookie)、ダイナミック・フォント、スタイルシートの機能を無効にしていると、ページはそれらの機能に依存することはできないことになります。その上、Netscapeのユーザがウィンドウやフォントの大きさ、表示フォントを変更することができるということは、ユーザがページの見た目を劇的に変化させることが可能になっているということを意味します。

ある特定のブラウザのためにページをデザインすることは重大な過ちです。 Netscapeで「最適に表示されるようにデザインされた」ページはしばしばNetcapeのあるバージョンでのみ、また、ユーザが初期設定をデフォルトの状態にしておいた場合にのみ、 最適に表示されます。Netscapeの新バージョンがリリースされると、旧バージョンで「最適に表示されるようにデザインした」ページ作者の多くがソース・コードに新たに見つかったエラーを慌てて処理することになります。

例えば、Netscape 2.0がリリースされた時、クオーテーションを閉じなかったページの作者は(例:<A HREF="oops.html>Oops</a>)、Netscape 1.22での表示とは違って、ページのある部分が突然消えてしまうことを発見しました。また、Netscape 4.0がフォーム要素を「大きく」表示してしまうため、Netscape 3.0の仕様に従ってレイアウトをきめ細かにデザインしたページの作者は、突然ページを書き直さなければならなくなりました。Netscape 4.0はまた、必要なセミコロンが記述されていないとそこでコードの認識を止めてしまいます(例:Foo&nbspbar)。これらのことから、どのブラウザよりもバリデータの方がより重要なチェックツールであると言えます。

神話その5:私が想定している利用者はあるブラウザを特定の設定で利用している人だけなので、その人たちだけを想定してデザインをしてもよい

間違っています。ウェブ上では、あなたが「想定している利用者(target audience)」がどのブラウザをどのような設定で利用しているかは分からないのです。Lynxのユーザは図書館からアクセスしているホームレスであるか、ホテルの部屋でラップトップ・パソコンからブラウズしているビジネス・エグゼクティブであるか、というようなことはあなたには単純には分かりません。個人が利用しているブラウザとブラウザに関する個人の嗜好の間には何の関連性もありません。

たとえ、あなたが想定している利用者がある特定のブラウザを使用しているということが分かったとしても、現在使っているブラウザと現在のバージョンを将来に渡って変更なくそして無期限に使い続けるという可能性は低いでしょう。ブラウザの市場における変化はとても急激に起こります。ブラウザに依存しないサイトのデザインをすれば、簡単にブラウザの市場の影響を回避することができます。

神話その6:アクセシブルなページを作成するには非常に多くの時間とお金が必要である

間違っています。アクセシビリティはHTMLに組み込まれているものです。時間とお金がかかりるのはアクセシビリティを捨てることの方です。上手く作成されていないページをアクセシブルなサイトに変換するのにはコストがかかるかもしれませんが、アクセシブルなサイトを最初から(from scratch)作成するのにはコストは実質的に生じません。

代替となるコンテンツを用意するためには少々のコストが必要になることがありますが(例えば、Javaアプレットなど)、一般的に、アクセシブルなページは利用者のより高い満足度が得られるので採算がとれます。その上、アクセシブルなページはしばしば維持・管理が容易安価に行うことができます。なぜならば、ページが妥当に、かつ、構造をベースに記述されているからです。さらに、ページの表示については外部のスタイルシートへのリンクを用いていることがあるからです。アクセシブルでないページに共通する「ごちゃごちゃのタグ」を編集するのはまさに無駄な仕事であって、長期的には維持・管理コストが増加することになります。

神話その7:ウェブはグラフィカルなメディアなので、テキスト・ベースの利用者や視覚障害者のことを考慮する必要はない

間違っています。ウェブはグラフィカルなメディアではありますが、文字・聴覚(音声)メディアでもあります。グラフィカルなページはテキストベースでも音声ベースでもアクセシブルなものになり得ます。このことによって、すべてのユーザがどのようなブラウジング環境からでも情報にアクセスすることができるようになります。つまり、あなたのお気に入りのサイトに自宅のデスクトップ・パソコンからでも、パームトップを使って浜辺からでも、 音声ブラウザを使って車内からでもアクセスすることができる、ということを意味します。さらに、視覚障害をもつ利用者が情報化時代から閉め出されることがない、ということも意味します。

加えて、検索エンジンは事実上テキストベースで運用されています(effectively blind)。さまざまな調査結果によれば、ほとんどの利用者は検索エンジンでページを検索することがわかっています。ですから、AltaVistaやInfoseekなどのテキストベースのユーザに対するアクセシビリティの確保はサイトの成功のカギを握っているのです。

しばしば推測されることですが、およそ30%のウェブ利用者が画像を表示させていません。十分な高速通信回線(bandwidth)が利用できず、分ごとの電話料金の課金制度が課せられている地域では、多くの利用者にとって、装飾画像は貴重な時間を無駄にするものとされます。このような利用者を押し退けてしまうことは、ビジネスの観点から言えば、顧客を失うことにつながるだけです。

神話その8:ウェブサイトの利用者は作者の意図通りにサイトを見なければならない

間違っています。利用者は作者の意図通りにサイトを見ることはできません。ただし、サイトが種々に異なって見えるように意図している場合を除きます。ブラウザ、ウィンドウの大きさ、表示するフォント、フォントの大きさ、解像度、カラー階調、その他のウェブに関する設定が利用者によってすべて異なるので、すべての利用者にとってある文書を同じように見せるということは全く不可能です。

ウェブサイトは利用者自信が望む表示方法で表示されるべきです。作者が指定したスタイルシートで表示させたい利用者もいれば、独自の表示方法を強制的に利用してコンテンツにアクセスする利用者もいるでしょう。作者の選択は、ある限られたウェブ利用者にだけ「意図通りに」表示されるようなサイトをデザインすることか、作者の提案する表示方法も備えた上で、すべての利用者がアクセスすることができるようなサイトをデザインすることか、どちらかになります。


このページの作者はLiam Quinn <liam@htmlhelp.com>です

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