World Wide Webの最も重要な長所の一つとしてアクセシビリティ(WWWはだれにでもアクセス可能であること)が挙げられます。しかし、非常に限定されたブラウズ環境でのみ「最適に表示される」ようなページをウェブページの作者が作ってしまうことで、この長所が失われつつあります。アクセシビリティがもたらす重要な利益や、アクセシビリティの向上のための対策が非常に容易であることを理解しない作者のページは、サイトの潜在的な利用者を故意に減らしていることになります。
アクセシブルなウェブサイト、つまり、ウェブのすべての利用者にとってアクセス可能なサイトは、潜在的な利用者を最大限にすることができます。サイトの中には、利用者が使用しているブラウザ、解像度、設定に基づいて、ページの利用者を不必要に制限しているものもあります。「...でご覧ください」という表示は、利用者の一部に「お引き取りください」と言っているかのようです。ビジネスの観点で言えば、このようなメッセージは適切ではないでしょう。
アクセシブルなサイトは、使用しているブラウザ・解像度・設定や視力の良し悪しに関わらず、すべての利用者にとってアクセスすることが可能です。アクセシブルなサイトは、視覚障害者を含めて、世界中にいる750万人もの障害者にとって開かれたものです。よりよいページ作成を行うことで、ウェブでの情報提供者は、世界中の障害者を情報社会から閉め出すことを防いだり、ないがしろにされてきた大きな市場を開拓することが可能になります。
ウェブ上には、検索エンジンのロボットという「視覚に頼らないウェブの利用者」も存在します。検索エンジンのロボットはテキスト・ベースで、一般的にはHTML 2.0しかサポートしていないので、検索エンジンに効率良く検索されるようなサイトを作るためには、アクセシビリティは重要な意味を持ちます。サイトにある画像のALT属性を記述していなければ、利用者にサイトが検索される機会を失っていることになります。
アクセシブルなウェブサイトがもつ柔軟性は、ウェブをより一層発展させるものです。ウェブはしばしば視覚メディアとして理解されていますが、アクセシブルなウェブページは音声や点字による表示や出力を可能にします。今日、音声出力によるブラウジングは視覚障害者の間ではよく利用されますが、将来は、車内でのウェブ・ブラウジング、電話によるブラウジング、「ウェブ・ウォークマン」によるブラウジングなどが急速に普及するかも知れません。ページの作者がアクセシブルなページを書くことによって、顧客や利用者にとってはこれらの革新的な技術を柔軟に採用することが可能になります。
HTML注意深く記述すれば、非常に低いコストで、または、ほとんどコストをかけずに、アクセシビリティを確保することができます。アクセシビリティを捨て、HTMLをできそこないのレイアウト用言語として利用することは、潜在的な利用者を減らしているだけでなく、サイトの柔軟性やユーザビリティ(使い勝手)を失うことも意味します。
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日本語訳:青山知靖(Tommy AOYAMA)